- A
- 労働時間とは、労働者が使用者(会社)との間で締結した労働契約(労働者が自己の労働力を使用者に提供し、その対価として賃金を受ける)に基づき、使用者の指揮命令下におかれる時間のことです。ですから、現実に精神または肉体労働に従事していなくとも、「休憩時間中に来客当番として待機していれば、それは労働時間である」との行政解釈(昭63.3.14、基発第150号)もあります。
最高裁判例でも、使用者から義務付けられた作業服や保護具の着脱等に要した時間について、労働者が就業を命じられた業務の準備行為と認めて、これを労働基準法上の労働時間としています(三菱重工長崎造船所事件)。
同事件は、会社側が、始業・終業基準として、
- 始業に間に合うように更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に実作業を開始すること
- 午前の終業においては所定の終業時刻に実作業を終了すること
- 午後の始業に当たっては右作業に間に合うように作業場に到着すること
- 午後の終業に当たっては所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うこと
を決めたのに対し、労働者が、a)入退場門から所定の更衣所までの移動時間、b)更衣所等において作業服のほか所定の保護具等を装着して準備体操場まで移動時間、c)午前ないし午後の始業時刻前に副資材等の受出し・午前の始業時刻前の散水に要する時間、d)午前の終業時刻後に作業場から食堂等まで移動し、現場控所等において作業服等を一部離脱する時間、e)午後の始業時刻前に食堂等から作業場等まで、作業服等を再装着する時間、f)午後の終業時刻後に作業場等から更衣所等まで移動してそこで作業服等を脱離する時間、g)手洗い、洗面、洗身、入浴後に通勤服を着用する時間、h)更衣所等から入退場門まで移動する時間が、いずれも労働基準法上の労働時間に該当するとして、8時間を越える時間外労働に該当する右諸行為に対する割増賃金等を請求したケースですが、裁判所は、このうちb)、c)及びf)の諸行為に要した時間は、いずれも使用者の指揮命令下に置かれているものと評価でき、労働基準法上の労働時間に該当するとして労働者の請求を一部認容しました。
ご質問の着替えやラジオ体操を労働時間とみるべきか否かは、上記判例に照らしてみれば、作業服の着用が災害防止上の見地、また使用者において作業能率の向上、職場秩序維持など経営管理上の見地から義務付けられた場合には、業務開始の準備行為として労働時間にあたるものと考えられます。ラジオ体操についても、同様に考えるべきでしょうが、始業前10分間のラジオ体操について「参加は従業員に強く奨励されていたが、義務付けられていたということはできない」として、労働時間として認めなかった判例(昭58.8.25、大阪地裁、住友電気工業事件)もあります。
|